君の手を繋いで

初めて日向と一緒に遊んだのは、森だった。

家の近所にあって、俺と兄貴でよく虫取りをした森だ。

その時も虫取りをするつもりだった。


それは、同じ幼稚園の女の子は、虫を見るだけでキャーキャー言うから、日向もそれで嫌がると思ってたからだ。

つまり、地味に日向を追い返そうとしてたわけだ。


でも、日向は違った。


「ねぇ、なにするの?」

「カブトムシとクワガタさがすんだよ」

「なぁに? それ」

日向は首を傾げた。


女の子だから当たり前だけど、日向は虫取りなんて初めてだったらしく、虫の名前もろくに知ってなかった。


「しらねぇの? おまえバカか?」

俺は随分とひどいことを言っていた。


今となっては日向は俺と比べ物にならないくらい頭がいいっていうのに……


「カブトとクワガタはな、くろくて、ごっつくて、めちゃくちゃかっこいいんだぞ」

兄貴が日向にそうやって教えてやっていた。


「ふーん」

それだけ聞いても分からなかったらしく、日向はあまり興味がなさそうに言う。


「なんだよ。いやならかえれよな」


これで帰ると思ったのに……


「ひなたもみたい! カブトムシ、つかまえて!」


そうやって、満面の笑みで言われて、正直むかついた。

そんな簡単に捕まえられるわけはない。

勝手についてきておいて、勝手なことをいうな。


そう思った。

思ったけど、それを言うのも幼いなりに男として癪だった。


だから俺と兄貴は、日向のことは無視して虫を探し始めた。



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