君の手を繋いで

「ひなたもさがす!」

日向は急に張り切りだして、森を駆け回り始めた。


俺と兄貴は顔を見合わせて、

「しょうがねえな」

と言って笑った。




「あ! いた!」

日向は早々に声をあげて俺達のところにやってきた。


「みてー! みつけたー! すっごいおっきいの! ツノ2ほんもあるの!」

そう言って、日向は手の中のものを見せてきた。

それをみて、俺達は目を丸くした。


「これカブトじゃねぇよ! クワガタだ!」

「しかもでっけぇ!」


日向がカブトムシだと思って捕まえたのは、十センチ近くの大きさのクワガタだった。


その森は、虫が捕れるといってもたかが知れていて、クワガタなんて、めったに見つからない。

俺と兄貴でさえ、二、三回、それも三、四センチの小さなものしか見たことがなかった。



「すっげぇー……」

「すごいの?」

俺達が感動しているのに、日向はきょとんとしていた。


「こんなにでかいの、はじめてみたぞ。やるな、おまえ」

心からそう思って、俺は日向に言った。


すると、日向はより一層の笑顔になった。


その時の日向の表情は、今でも覚えてる。




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