感方恋薬-かんぽうこいやく-
「ん~そうじゃのう」


爺は天井を見上げて何か考えて居たが、おもむろにあたしの方を向くと、


「なにもしなくて良のでは無いか?」


「なんだよそれ」


「一時的な倦怠期みたいな物じゃないかのう。放っておけば、そのうち元の鞘に収まるじゃろ」


「じゃ、じゃあ、あたしのした事は…」


「全く無意味と言うことじゃ」


爺はそう言うとあたしに向って、ニカッと笑った様な気がした。


あたしはそれを見て、何かやり場の無い怒りに追い立てられて、取りあえず、怒りの矛先を爺に向ける為に手近な獲物を探してみたが、残念ながら都合の好さそうな物は見つからなかった。
< 120 / 327 >

この作品をシェア

pagetop