感方恋薬-かんぽうこいやく-
爺はそう言うとあたしからシナモンスティックを取り上げ、ゆっくり鍋の中身を掻きまわし始めた。


「よいか、こんな感じでゆっくりと同じ方向に掻き回すんじゃ。ガスの火も、もう少し弱い方がよいのう。そして、かき混ぜてる間は、呪文を唱えるのを忘れない事。口に出して唱えても構わんし、心の中で唱えても構わん。ほれ、やってみい」


あたしはちいさく頷くと爺からシナモンスティックを受け取り呪文を唱えながら、鍋の中身をゆっくりと掻きまわした。


「そうそう、その調子じゃ」


何となく、良い匂いがして来た様な気がして来た。それを感じた頃


「よし、そろそろ頃合いじゃな。火を止めて冷えたら何か別の器に移すが良い」
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