感方恋薬-かんぽうこいやく-

第8節

御近所のおばさま方の好奇の視線を掻い潜って自宅に何とか辿り着いた。


「ただいまー」


あたしはキッチンを通り過ぎる時に母の後ろ姿を見たので反射的に挨拶した。


「あ、貴子おかえり」


母はあたしに振り向き洗い物を中断して返事を返してくれた。


その声を背にリビングを通り過ぎると、いつも「水戸〇門」の再放送を見て居る筈の弟が居ない。


そう言えば玄関に靴も無かったから未だ帰ってきて居ないのだろう。


あれ程楽しみにしている再放送の時間に帰って居ないと言う事は何かのっぴきならない事態でも発生したのだろうか。
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