感方恋薬-かんぽうこいやく-

第8節

 「使い方は簡単だからね。コロン付けるのと同じ様に、手首とか耳の後ろに付けて、意中の相手の前を通り過ぎればそれで良いから」


 あたしはそう言うと、無意味にウィンクした。紀美代はそれを見て、ぽっと頬を染めた。


あぁ、居るんだなぁ、こんな時代に成っても意中の相手に告白出来ずに悩める乙女が。
現代では反則技みたいな清楚な黒髪で編んだ三つ網、華奢で可憐な仕草。


ちゃんと見れば、物凄く可愛いのにラブレターの一つも貰った事が無いらしい。


ここにも一人間違った世の中に翻弄される乙女が居たのだ。
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