感方恋薬-かんぽうこいやく-

あたしは、則子の明るさとは正反対に、顔の右半分に簾でも掛けた様な表情で、


「おーはーよー」


と、言いながら、ゆっくりと右肩方向に振り返った。


その表情が余りにもリアルだったのかどうなのか知れないが、則子はあたしの顔を見ながら肩を叩いた格好のまま、困った様な笑顔を張り付けて、そのまま固まっていた。


「た…貴子…何?、何か有ったの?」


……何か有ったのって、あのな


あんた…あんたのせいだ、あんたの。
< 26 / 327 >

この作品をシェア

pagetop