感方恋薬-かんぽうこいやく-

第6節

「どうかしたんですか貴子さん、誰か居るんですか?」


幸はそう言うとあたしの肩越しに後ろを覗きこんだ。しかし、爺は幸には見えない。見えるのはあたしだけだ。


「う、ううん、別に何でも無いのよ」


しかし用心に越した事は無い、あたしは幸を押しのけて後ろを見るのを止めさせた。


「そうですか?誰かと話して居る様に見えましたけど…」


「え、そ、そんな事、無いよ」


あたしは、その場を取り繕うのに必死だった。
< 266 / 327 >

この作品をシェア

pagetop