感方恋薬-かんぽうこいやく-
「げ、紀美代…」


あたしは心の中で、呟くと則子と2人で紀美代の視線を強行突破する事を試みた。


「無視しても無駄ですよ、貴子さん」


紀美代はあたしを呼び止めた。


「あちゃ、やっぱり来たか…」


「何?どうしたの紀美代」


則子が紀美代に返事をしてしまった。


此れで万事休すだ。


「則子さん、私は貴子さんに用事が有るんです」


「貴子に?貴子、あんた、なにかやったの?紀美代が何か怒ってるみたいだけど」
則子は紀美代をさりげなく指差しながらあたしに尋ねた。


「い、いや別に、そんな大した事じゃ…」


「大した事です!」


紀美代があたしの言葉じりを捕らえてきつく反論する。
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