感方恋薬-かんぽうこいやく-
ACT9 闘い終って日が暮れて

第1節

どういう事だ?あたしの変化に気が付かないのか?と、思い、あたしはへんなしなとポーズも加えて見た。


「ど、どこか痒いんですか?私で良ければお役に立てると思いますが」


幸は席から立ち上がると、あたしの背後にまわり、背中を搔こうと右手を構えた。


「い、いや、いいんだ、ダイジョ~ブだから、気にしないで」


あたしは心の底から焦った。


完璧な筈の薬が全く効いていない。何故だ?


敗北感を背中に貼り付けてあたしは自分の席に戻った。時を同じくして、紀美代が教室に現れた。


そして一目散に幸の処に向かうと、朝の挨拶をして自分の席に着いた。


マメだね紀美代。


恋愛って、そういうマメさが必要なんだね。あたしはしみじみと実感した。
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