感方恋薬－かんぽうこいやく－

「さ、二人とも握手なさい。これで恨みっこ無し良い友達に戻るのよ」


則子は紀美代の手を掴み、あたしの右手を無理矢理掴ませた。あたしは紀美代の温かい手の感触を感じながら


「ごめん…」


と、一言呟いた。紀美代は溢れ出る涙を拭わずにあたしを見つめて居る。


「わ、分かってたんだ…幸雄さんが貴子さんの事好きだって。でも、でも…」


「うん、わかってる、わかってるよ」


あたしも紀美代の涙に少しぐっと来てしまった。


負けるって分かって勝負を挑んで来たのか紀美代。


もし、あたしが男だったら、あんたの事、放って置かないぞ。


幸は何だか訳が分からない顔で、おろおろおろしているだけ、こういう肝心な処で役に立たない男だ。まぁ男ってのはここ一番で役に立たないものであるが…ね。