感方恋薬-かんぽうこいやく-
第9節 幸の微笑み
どんなもんだと校門の前で威張っていたら、右肩をぽんぽんと叩く奴が居た。
誰じゃ、あたしの至福の時間を邪魔する奴は!
と、振り返ると其処に立って居たのは幸だった。
正確に言うと田中幸雄(たなかさちお)。
あたしのクラスメートで平凡な名前と性格が一致してるのかどうか分からないがいつも幸せそうにへらへらと笑って居る。
身長もそれなりに有るのだが、猫背気味の背中が彼を少し小さく見せる。
それに、かなり度の強い眼鏡。
昔の牛乳瓶の底見たいなレンズでは無いが視力はかなり悪いらしい。