感方恋薬-かんぽうこいやく-
が、もう少し締まりの有る表情をすれば、それなりに見られる奴な気がするのに勿体ない奴だ。


「貴子さん…何してるんですかぁ?皆見てますよぉ?」


幸の言葉に一瞬で我に帰り周りを見渡すと、何人かの人々が単独だったり、何人かグループを作ってひそひそ話をしたりしながら、あたしを見て居る。


それに気が付いたあたしは照れ隠しの必殺咳払いを一つして


「いや、特に何もしてないから。ん~じゃね~」


あたしは人間国宝に作って貰った様な作り笑いを顔に張り付け右手をイラヒラさせながら妙に凛と背筋を伸ばして幸の前から立ち去った。
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