無口な先輩
絵に描いたような華麗なシュート。
そんな漫画みたいな大技を決めといて、当の本人は他の人達と喜んでもなく。
さっさと自分のいた位置に戻ってしまった。
なんか、不思議な人というか無口な人というか。
何を考えてるのか分からない。
そんな感じの人だった。
しばらくしてから、授業が終わるチャイムが聞こえ、帰りのHRで先生が長々と話していた。
「――これで終わりにします。あと、笹川さん。この後委員会があるので、家庭科室に行って下さい。」
「・・・はい。」
・・・委員会。
今日、このタイミングでこの仕打ちはないんじゃないでしょーか。
別に、吉田君に振られた事はいいけど、なんか気まずいし。
出来れば少しの間会いたくなかったのに。
あんな性格だって分かっちゃったし。
「はぁ。」
沢山のクラスメイトが帰っている中、ため息をしたら咲が心配そうにこっちに来た。
「あたし、代わりに行こうか?」
「あ、いや、大丈夫だよ。」
あんまり親友に心配されても心が痛くなるばかりだ。
ここは、我慢して家庭科室に向かうしかないか。
「咲、遅くなるかもしれないから先に帰ってて?」
「うん・・・。」
元気なさそうな咲にまた明日、とだけ告げて私は家庭科室へと急いだ。