この胸いっぱいの愛を。
・苦手な先輩
「とうちゃーっく!」
私はフェンスの近くまで駆け寄って、大きく伸びをした。
今日の天気は、快晴。
天気予報で言っていた通り、頭上には雲一つない青空がどこまでも広がっている。
────ここ、屋上は、私にとっての憩いの場だったりする。
悩んでる時や疲れた時はここにきて、今日みたいに空を見上げるんだ。
そうすれば、私の悩みなんて、凄くちっぽけなものに思えるから。
フェンス越しに見えるグラウンドでは、男子がボール遊びに夢中だ。
サッカーだったり、ハンドボールだったり、はたまた、バスケだったり……。
必死でボールを追い掛ける姿を見るのは、嫌いじゃない。
でも、こうしていると、なんだか無性にテニスが恋しくなって。
私は、グラウンドからテニスコートに視線を移した。
──────すると。
「…………あ」
鮮やかな緑色のコートに、人が一人立っていることに気が付く。
ネットを挟んだその人物の反対側には、無数のテニスボールが転がっている。
周囲を全く気に掛けることなく、無我夢中でサーブを叩き込むその人は─────………
「っ、将兄………」
私がそう呟いた、その時。
ギィ〜〜〜…
屋上のドアがゆっくりと開いて、誰かが来たことを知らせた。
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