この胸いっぱいの愛を。
・期待のルーキー
〜桃香side〜
私が連れてこられたのは、駅前に並んでいる様々な店の中の一つ。
「ここのココアが美味しいのよねー♪」
“ワクワク”という効果音が聞こえてきそうな程、アユはご機嫌だった。
私の手を掴んだまま、自動ドアの前に立つ。
ドアが開いて店内に入ると、満面の笑みを浮かべた店員さんが声をかけてくれた。
「いらっしゃいませ〜。
何名様ですか?」
「二人です」
「では、こちらへどうぞ」
案内されたのは、壁ぎわの四人用の席。
私はソファーに腰掛けて、店内を見回した。
木でできた洋風のテーブルや椅子はとてもオシャレで、普段ファーストフードの店にばかり行っている私には、とても新鮮だ。
オレンジ色の照明や壁に掛かっている大きな天使の絵も、凄く暖かい雰囲気を演出している。
「良い感じでしょ?」
私が観察している間に注文を終えたアユが、水の入っているコップを揺らしながら自慢げに言った。
「うん、なんか落ち着く」
素直に頷くと、アユは身を乗り出して「だよね!」と興奮気味叫ぶ。
それと、ほぼ同時に。
「あれー、偶然だな、お二人さん」
聞き慣れた声が、頭上から降ってきた。
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