この胸いっぱいの愛を。
・痛みと傷み
〜桃香side〜
「駿河先輩!!」
私は道路を挟んで向かい側にいる駿河先輩に聞こえるように、大きな声で叫んだ。
でもその声は、目の前を横切った大型トラックにかき消されてしまう。
目に焼き付いて離れない、駿河先輩のあの表情。
私は道路を横切る車が耐えないことに苛つきながら、向こう側に渡るチャンスを待った。
そして、信号が赤になり車の波が途絶えた、その瞬間。
「駿河先輩!!」
私は再びそう叫んで、怒りで顔を真っ赤にしている彼に駆け寄る。
「先輩、どうし…」
「どこにいるかって聞いてんだよ!!!!」
右手は、女子生徒の胸倉を掴んだまま。
もう一人は腰が抜けたのか、その場に座り込んで震えている。
周囲の目など気にすることなく、怒鳴り散らす駿河先輩。
私の声も、耳に入ってないようだ。
私がもう一度声を掛けようと息を吸い込んだ、その時。
「何を企んでる!?
部長に何する気なんだよ!?」
……………“部長”。
先輩が口にしたそのワードに、私はビクリと身体を震わせた。
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