水の中の鳥籠
足元に広がる土。

目の前に広がる自然。

昔の人はこんなところで生活していたんだ。

「……もうそろそろ戻るか」

一番ここに来たがっていたコウが帰ることを提案した。

ディールは意外に思った。

てっきり最後まで粘るのがコウだと思ってたから。

「このこと大人たちに言うのか?」

「このことって?」

「大地が綺麗でもう心配ないってこと」

「……もう大人たちは気づいてるんじゃないか?俺らが言うまでもないよ」

ディールの考えに珍しくコウが賛成ではない意見を言った。

そのときのコウはいつもより幾分大人に見えた。

それは多分、地上の光を浴びてコウの頭がギラギラ光っているから見間違えたんだと無理やり思うことにした。

今度この幼なじみがここに来る時はここに移り住む時だろうと漠然と思った。

だって、こんなに空気が綺麗で、本物の太陽があるのだから。




この時の彼らはまだ知らなかった。

表面上は昔のように戻っても、汚された大地はそのままの大地だってことに。
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