砂漠の王と拾われ花嫁
「左手が動かないと言うのにずいぶん幸せそうだ」



タヒール大臣の後ろには護衛が2人付いていたが、息子のタージルはいない。



「もう貴方にまで知れ渡っているのですね?」



気分を取り直し莉世は落ち着いた声で言う。



だが、心臓はバクバクしていた。



また何かをされたら今度は絶対に大声をあげるわ。



「もちろん わたしの耳に入らないものなどございません」



機嫌がいいのか笑みを浮かべている。


「お話があるのですが?姫君」



「わたしにはありません 早くここから出て行きなさい」



震える足がわからない事を祈る。



自分がおびえているのを知ったら向こうの思う壺。



「姫君、そうやって強がっていられるのもあと少し」



君の悪い笑顔を莉世に向ける。



「この原因を作ったのはタヒール大臣だわ のこのことここへやって来るなんて」



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