砂漠の王と拾われ花嫁
ラシッドは立ち上がると出口に向かった。


「殿下!結婚式は進めさせていただきますぞ」



ラシッドの背中に向かってタヒールが言った。



ラシッドはその言葉を無視して出て行った。



* * * * * *




「我が娘!」


上機嫌のタヒールはファティマの部屋の扉を開けると同時に言った。



ファティマは細長いベッドにうつ伏せになり体は薄い布がかけられているだけの姿だった。



毎日欠かさない施術師によるマッサージをしていたのだ。



布のすぐ下は素肌なのだがファティマは恥ずかしがることなくゆっくり起き上がり召使いの広げたローブに身体を寄せた。



腕を通したファティマは召使いが紐を結ぶのを見てから父親に視線を向けた。



「ご機嫌でございますのね?お父様」



「これが機嫌が良くならない筈がない!」



タヒールはファティマの手を取ると真っ赤なソファーに座らせた。




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