砂漠の王と拾われ花嫁
その頃、莉世を連れ帰るように命じたラシッド・ベン・ザイール・ジャダハールは、忙しいあまり彼女を頭から忘れ去っていた。
彼は砂漠に囲まれたジャダハール国の若き王。スラリとした長身だが、ローブの下は鍛えられた身体。涼しげな奥二重の目は鋭さを秘め、まさに美丈夫の風貌。ラシッド王に寵愛されたい娘たちが、国内や諸外国の姫たちで列をなすほどだ。
ラシッドが莉世を思い出したのは、宴が終わろうとした時だ。
ラシッドの隣で、しなだれかかるように魅力を振りまいていた美女が、莉世のことにふれたからだ。
褐色の肌の美女は、腹部が露出しているドレスを着ており、生地はとても薄い。
「ラシッドさま、今朝珍しい娘を拾ったとお聞きしていますが?」
「珍しい娘?」
ラシッドは一瞬なんのことかわからなかった。
「砂漠に倒れていた、変わった服を着ていた娘です」
ラシッドの後ろに控えていたアーメッドが一歩前に近づき教える。
「あぁ、あの娘か。どこにいる?」
ラシッドは凛々しく形の美しい眉の片方を上げて、アーメッドに問う。
「東の牢屋でございます」
アーメッドが衛兵に指示した牢屋は、罪の軽い罪人などが入る、一番清潔に保たれているところだ。
ラシッドは優雅な所作で立ち上がる。ピッタリと寄り添っていた美女がラシッドを仰ぎ見る。
「ラシッドさま、どちらへ?」
申し訳程度の布をまとった美女は、わざとすねたような瞳で見つめる。
「お前たちはもう下がれ」
美女たちになんの感情ももたないラシッドは、冷たく言い放つと、その場を立ち去った。
彼は砂漠に囲まれたジャダハール国の若き王。スラリとした長身だが、ローブの下は鍛えられた身体。涼しげな奥二重の目は鋭さを秘め、まさに美丈夫の風貌。ラシッド王に寵愛されたい娘たちが、国内や諸外国の姫たちで列をなすほどだ。
ラシッドが莉世を思い出したのは、宴が終わろうとした時だ。
ラシッドの隣で、しなだれかかるように魅力を振りまいていた美女が、莉世のことにふれたからだ。
褐色の肌の美女は、腹部が露出しているドレスを着ており、生地はとても薄い。
「ラシッドさま、今朝珍しい娘を拾ったとお聞きしていますが?」
「珍しい娘?」
ラシッドは一瞬なんのことかわからなかった。
「砂漠に倒れていた、変わった服を着ていた娘です」
ラシッドの後ろに控えていたアーメッドが一歩前に近づき教える。
「あぁ、あの娘か。どこにいる?」
ラシッドは凛々しく形の美しい眉の片方を上げて、アーメッドに問う。
「東の牢屋でございます」
アーメッドが衛兵に指示した牢屋は、罪の軽い罪人などが入る、一番清潔に保たれているところだ。
ラシッドは優雅な所作で立ち上がる。ピッタリと寄り添っていた美女がラシッドを仰ぎ見る。
「ラシッドさま、どちらへ?」
申し訳程度の布をまとった美女は、わざとすねたような瞳で見つめる。
「お前たちはもう下がれ」
美女たちになんの感情ももたないラシッドは、冷たく言い放つと、その場を立ち去った。