三澤斗春と集められた名探偵。
名探偵ではありません。
「…………な、なんでだよ」
三澤は、力なく俯いた。
何かの公共施設。
大きなホールの中の光景が余程こたえたようだった。
「現実って、厳しいんですね……」
亜九谷は、三澤を少し哀れに思った。
「ほ、ほら、三澤さんはマイナーメジャーですから、ね!巷では噂で持ち切りですよ!」
三澤は、亜九谷にちらりと目をやった。
死んだ魚のような目。
こんな、三澤は見たことがない。
「なぁ……亜九谷さんよぉ。あそこのテーブルでピザを食べてるの、誰か分かるか?」
見る。
見たことはない。
どこにでもいそうな男だ。
「………あの人が、どうしたんですか?」
「あいつは『あぶない探偵』だ」
「え、なんですか、それ?」
「まぁ、『あぶない刑事(デカ)』の探偵版だな……その横の金髪」
「誰、ですか?」
「ジーパン探偵だ」
またも、刑事(デカ)のパロディだった。
「さらに、その横のチビ」
この流れで行くと、刑事ドラマが出典のはず。
「ええっと……探偵コロンボとか、ですか?」
「いや……」
三澤は首を横に振った。
「探偵王・ガォガイガァー、だ」
「なんでですかっ!?」
「なんでも何も、そういう通り名だからな」
「いや、完全にふざけてるじゃないですか!軽いイジメですよ!?」
亜九谷は、もう一度ホールの中を見渡した。
探偵界の中では有名な人々なのだろう。
「ちなみに、俺は『探偵・オブ・ジョイトイ』」
「断固抗議するべきでしょ!何、甘んじて受け入れちゃってるんですか!?」
嫌だ。
『あ、あいつ、探偵・オブ・ジョイトイの助手だ』
『助手・オブ・ジョイトイだ』
とか、影で言われるのは。
絶対に嫌だ。