三澤斗春と集められた名探偵。
驚きのあまり垂れ出したヨダレを拭きながら、亜九谷は考えた。
あのお茶、安モノ。
すげー、安モノ。
このまま飲ませるのは失礼になる。
どうにかして、高級なお茶と変えなければ。
でも、どうすれば?
…………。
これしか、ないのか。
亜九谷の思い付いたのは、たった一つの冴えたやり方だった。
「おいおい、様なんて付けるなよ。ただの役職だろ……」
附屋根は困ったように笑いながら、お茶に口をつけ――――
「でぇえぇいやぁーっ!!!」
られなかった。
亜九谷が、瞬時に湯飲みをかっさらっていた。
さらに、そこからバク転しつつ距離を取る。
こぼれる、お茶。
「ひしゃっひしゃっしゃっしゃっ………」
亜九谷は、首をおかしな角度に曲げ、歪んだ口元から、得体の知れない音を漏らしていた。
「お、おい……亜九谷?」
三澤は、「ひしゃひしゃ」と笑う(?)亜九谷に気後れしながら、声をかけた。
「はっ!私ったら、何を!?あ、お茶がこぼれてる!変えのお茶を副署長様に!」
正気を取り戻した演技をしつつ、亜九谷はすたこらと応接間から消えた。
ごめん、全然、冴えたやり方じゃなかった。
「……あー、なんだ。あれが、助手の亜九谷」
「苦労してんだな……」
附屋根の言葉は、部屋に虚しく響いた。