Q
春風が二人の間を通り過ぎる。
寝転がる俺の数歩先で、彼女は立ち止まり、腕を組んで俺を見下ろす。
──そして、いきなりだった。
「用心棒が欲しいわ。アナタ、私を守って ちょうだい」
「……は?」
突然現れたその女に、第一声から命令口調で、いきなり言われた言葉。
理解不可能。
意味不明。
なんだこの女は?
俺の眉間にしわが寄る。
なに言ってんだ、この人。
その女を数メートル先で取り囲むように様子を伺っていた、俺と同じ制服を着ている学生たちが、彼女の言葉を聴いてざわめきだす。
変な注目を浴びるのは心地よくない。
「なんで俺が?用心棒?……てかアンタ誰 ?」
「「「知らないの!?」」」
ざわめいていた周りのギャラリーたちが、口を揃えて驚いた。
え、そんなに有名人なの?
こっちが驚いた。
知らない、こんな女。
いろいろと事情があってごたごたして転校してきた先だし、初対面だ。