「そうなの、うさぎさん。ネコさんは去年の用心棒」



この人が、始めの一年を一緒に乗り切った人……。

だからこんなに親し気であり、敬語も遠慮もないのか。



「そう、コイツの用心棒だったから、コイツのことはなんでも知ってる」



挑発しているような言い回しだ……。

やっぱりこの人は少し苦手かもしれない。



「涼歌のことならなんだって知ってるんだ。だから、先輩から一つ、教えてやらなきゃならないな。コイツくらいしかやらないこと」

「あっ!ネコさんそれはっ……」



ネコさんは俺に向かってくると、その整っている顔を俺の耳元に近づけた。

そして耳元で囁かれたその言葉。



「涼歌、家出の常習犯だから、家教えない方がいいよ?」



囁かれた言葉は、そんな注意事項だった。
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