こんなにヒドイことをするなんて、唖然とした。

そんな事をするのに値するほどのことだろうか。

だって名前だぞ、自分だけの、自分ひとりだけの大切なものだ。

何にも代えられない名前を、こんな風に痛みつけられるなんて……嫌に決まってる。



「……なんで名前くらいでこんなことしてくるんだ?」

「楽しんでいるのよ。ったく低レベルな愚民共が」



わぁ、口わるいですよQ様。



「今までは疑いはあったけど、決定まではいかなかったの」



そう言った菅原は悔しそうな顔をしている。



「それはなんの事ですか?」

「特に見守るべき人物のリストよ。その中に麻里亜さんも入っていたの」



見守るべき人物リストなんてものがあったのか。

初めて知った。

そのデータもすべて菅原の頭の中に入っているのだろうか。

その膨大な情報が入る脳にはいつも驚かされる。



「名前のことなんだから、親の選択が悪かったんじゃ……」

「泉麻里亜」



彼女はまたビクッと反応した。



「以前の名前よ」



今と苗字が違っていた。
< 62 / 410 >

この作品をシェア

pagetop