忍抄(しのぶ・しょう)
 俺はどもった。

「え・・・い、いや、そ、その・・・あんな可愛い子なら誰でも気に入るだろうよ!」
「なんなら、恋人いないみたいだからデートしてやれば?」
 鳥居の顔が悪戯小僧のように笑った。

 俺は真っ赤になって、
「え・・・いいのか?・・・お前、本気かよ?」
「聞いてみるか?」

 そのとき、階段を登るとんとんという軽やかな足音。
 忍は兄の部屋に、盆にコーヒーを二つ乗せて入ってきた。くりくりしたその瞳で俺を見て笑った。
 可愛い!
 こんな武者(むさ)い兄にこんな妹が!

 鳥居がコーヒーを俺の前に置いている忍に言った。
「忍!吾郎がお前をどっかに連れて行ってくれるみたいだぜ」

 忍はえっと驚いた顔を俺に向けたが、すぐうれしそうな笑みを見せて、
「え!ほんと!どこに連れてってくれるの?」

 俺はこの成り行きに戸惑っていた。
 親友の妹だから、こんなに簡単に連れ出すことが出来るのだろうが・・・

 ちょっとやばい!この子は俺の好みすぎる!
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