忍抄(しのぶ・しょう)
俺は、映画館が幾つも入っている、巨大デパートの銀座マリオンの前で忍を待っていた。
あの約束から一週間経っている。まだ三十分前だ。
俺は本当に忍が来るのか分からなかった。
忍は鳥居家の末の三男で、すぐ上の妹の存在を知っていた俺は、忍が彼女であると勘違いをしてしまったのだ。
忍と姉は、二年前に両親が九州に隠居した時、一緒に付いて行ったが、忍は東京の高校に入りたいといって戻ってきたのだ。前の家に兄貴と住めば両親も安心だ。
俺は落ち着かず、タバコを何本も吸い続けていた。大きな通りのガードの前にある吸い殻入れは満杯で、俺の足下に吸い殻がたくさん落ちている。
待ち合わせた五時になった。来ない・・・十分経った。そして二十分・・・
それはそうだ。
男の子とデートなんて冗談だったのだ。今頃、あの兄弟は大笑いしているだろう。いいさ、真に受けた俺が馬鹿だった・・・
「遅れてご免なさい!」
ふいに後ろから声を掛けられて俺は体を硬直させた!
息を弾ませた忍が立っていた。
あの約束から一週間経っている。まだ三十分前だ。
俺は本当に忍が来るのか分からなかった。
忍は鳥居家の末の三男で、すぐ上の妹の存在を知っていた俺は、忍が彼女であると勘違いをしてしまったのだ。
忍と姉は、二年前に両親が九州に隠居した時、一緒に付いて行ったが、忍は東京の高校に入りたいといって戻ってきたのだ。前の家に兄貴と住めば両親も安心だ。
俺は落ち着かず、タバコを何本も吸い続けていた。大きな通りのガードの前にある吸い殻入れは満杯で、俺の足下に吸い殻がたくさん落ちている。
待ち合わせた五時になった。来ない・・・十分経った。そして二十分・・・
それはそうだ。
男の子とデートなんて冗談だったのだ。今頃、あの兄弟は大笑いしているだろう。いいさ、真に受けた俺が馬鹿だった・・・
「遅れてご免なさい!」
ふいに後ろから声を掛けられて俺は体を硬直させた!
息を弾ませた忍が立っていた。