悪逆の檻
改めて手品師を見る。
手品師は、壁を見つめていた。
視線の先、壁に小さなモニターが埋め込まれている。
そこには、いくつかの部屋が写し出されていた。
おそらく、別の部屋だろう。
「僕らの所も合わせて、16部屋だね」
手品師が、スポーツ観戦でもしているかのように、暢気にしゃべる。
確かに、画面の1つには自分の後頭部と手品師がいた。
振り返る。
部屋の隅、天井によく見る黒い半球体のカメラがあった。
16部屋。
16部屋。
2人のうち、どちらかが勝ち残ると考えると。
16、8、4、2、1。
つまり、後5回だ。
可能性であれ、終わりが見えるだけありがたい。
残りは32人。
生き残る確率は、3%ほど。
消費税より低い。
……消費税より、低いだって?
俺は、なに馬鹿なことを考えているんだ。
いや、少し余裕ができているこのか。
よろよろと席に着く。
顔についている、血を拭う。
ちらりと、手品師がこちらを見る。
勢いよくトランプに手を叩きつけた。
バンっと、木製のテーブルが鳴り軋む。
「ババ抜きでいいですか?」
自分から切り出していた。
「もちろん。その気になってくれて、嬉しいよ。はやく洗濯したいしね」
手品師が、無感情に笑った。