悪逆の檻
はやく、考えを切り替えないと、負けるのは自分かもしれない。
「大富豪って・・・あ、大貧民って呼んでました? 結構、ローカルルールが多いですよね。 あれで、どんどんやられてしまうんですよね」
「ですよね。 階段とか」
表面上、普通の受け答えをする。
その、瞬間。
あろうことか、自分の手元にカードが滑り込んでいた。
喉の奥から、悲鳴に似た息が漏れそうになるのを、圧し殺す。
シャッフルしているところを見た記憶がない。
そもそも、触れたことすら、カードが配られてから気付いた。
気配が無さすぎる。
相手が競技を決め、
相手が配ったカードでデスゲームをする。
もう、どんな仕掛けをされているかわからない。
すでに、負けが決まっている可能性すらある。
誠は奥歯を噛み締めた。
「ぃやー、手際いいですね」
言葉が喉から出づらかったか、どうにか、絞り出す。
きちんと見てるぞ。と暗にほのめかす。
「そうですか? 兄たちとするときは、いつも配らされてたので、手慣れてるのかもしれませんね」
そう言って、にっこりと笑う。