悪逆の檻
山岡 晶。
私は、彼の許嫁だ。
そして、彼は私の許嫁だ。
とても大切なことなので、逆にして言った。
中2の夏。
よくある(か、どうかは知らないが)、居酒屋で意気投合した馬鹿オヤジが決めてきたことらしい。
まぁ、まともな感覚の母たちは、自分達の好きなようにすればいい、とは言ってくれている。
ふつうなら、
糞オヤジ! なに意味のわからんことしくさりやがって!
と、ボコボコにするところだが。
ボコボコにされたオヤジが、震える手で出してきた相手の写真が、
どうしようもなく、突き刺さった。
少し鋭い、スッキリとした目もと、
それでいて、ずっと見ていたくなるような深く大きい黒目。
キレイと言う言葉しか当てはまらないような、整った顔。
風になびく髪が、写真からでもサラサラだとわかる。
カメラを向けられて、少し嫌そうな表情すら、心の一番深いところを、わしづかみにされたよう感覚にさせる。
そこから、私のイビツな恋が始まった。