音楽バカ

放課後、吹奏楽部にはうまくごまかして、希良は美音と誰にも見つからないように音楽室に向かった。
もっとも、希良の足取りは重いのだが。
その途中、希良は急に立ち止まった。

「美音〜…
 本当にごめんね…?」

「ん?」

美音も立ち止まった。

「いきなり何よぉ?」

怪訝な顔で美音が振り返る。希良は少し怯んだ。

「だ、だからぁ…
 あたしが歌嫌いなの知ってて先生に差し出したでしょ?
 もしかしたらあたし、なんかしたんじゃないかって…。」

「…だってあんたがあんな事するから。」

美音はうつむいた。明らかに視線を逸らした。

「えぇ、やっぱ何かあるの?!」

「忘れたの?」

美音が冷たい目線を向けた。
希良はますます焦る。

「こ、この前美音の鞄に入ってたお菓子、勝手に食べたから……?」

美音の眼光がいっそう鋭くなった。
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