音楽バカ

「ごごごごめん!!
 小腹が空いてつい…」

「あんた、そんなことしたの?!」

「…あれ?違った??」

美音は希良の両頬をつねった。

「いひゃい、いひゃい!!」
(いたい、いたい!!)

「さっきのは嘘よ。
 ちょっとした軽いジョークなのに。
 あんた、アレは期間限定で品薄のお菓子なのよ?!」

「ごへんははいッ…!」
(ごめんなさいッ…!)

「油断も隙もあったもんじゃないわね。」

美音はぶつぶつ文句を言いながら希良の両頬から手を離した。

「言ったでしょ?
 絶対音感があるあんただからあたしは頼んだって。」

美音は突き放したような冷たい声で言ったが、セリフはそうでもない。

「それに自分の大事な部を、
 どうでもいい人に頼まないでしょ。」

それは…
信頼されているととっても?
幼なじみが本当に時々みせる本音には、未だに戸惑う。
声は冷たいのに、目はまっすぐとしていた。

「そいつは…どうも。」

その後は何となく気まずかったが、その気まずさがなぜか嫌ではなかった。そうこうしているうちに音楽室にたどり着いた。
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