音楽バカ

「じゃ、開けるわよ。いい?」

美音は音楽室のドアに手をかけながら言った。

「……よし、来い!!」

希良は気合いを入れて構える。
それを見て美音は音楽室のドアを開けた。
その瞬間、音楽室がシンとなり、視線が集まった。

「黒澤先輩、こんにちは!」

「「こんにちは!!」」

一人が大きな声で言うと、周りの後輩もみんな大きな声であいさつをする。

「こんにちはー。」

美音は軽くあいさつをした。希良も遠慮がちに会釈した。

「声、大丈夫ですか?」

「うん、まあねー。」

苦笑いしながら流す。
声に関してはみんなあらかじめ知っているらしい。

「美音!」

慌てて駆け寄ってきたのは合唱部の部長の池部 沙穂子イケベ サホコだ。

「どーすんの?」

「んー、希良つれてきてみたんだけど…。」

美音はまたもや希良の腕をつかみ、沙穂子の前に引っ張り出した。

「え、宮路さんって歌嫌いじゃ…?」

沙穂子の顔が曇った。

「あたしのためならやってくれるんだって☆」

(はぁ?!)

希良は声を出さないよう心がけて顔で訴えた。

「宮路さん、友達想いなんだね…!」

おいおいおい、待てッ!!
なぜそうなる?!

「宮路先輩、すごいです!」

後輩まではやし立てだした。
何なんだこれは。
悪徳商法にも似た方法で、とうとう逃げ場がなくなった。

「希良、この歌試しに歌ってみてよ。」

美音は一枚の楽譜を取り出した。割と短い独唱曲。

あぁ…もう逃げられない。

美音が確認もとらずに前奏を弾き始めたので、希良も腹を決めた。



希良が歌い出した瞬間、合唱部一同は唖然とした。
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