音楽バカ
両者、一歩も退かずにらみ合っている。
そういえばこの2人、入学してすぐくらいから仲が悪かった。
2人とも成績が良いのだ。
ようするにライバルで、会う度にガン飛ばしあってる感じだ。
美音からすれば[ケンカするほど仲がいい]だが。
希良は焦っているが、美音は楽しそうに見守っている。
「うちの宮路に何か用ですか?」
菅波は表面のみ笑顔を浮かべて言った。
「今はうちらの希良だから。」
同じく、沙穂子も微笑んだ。
「宮路、お前にはあとでちゃんと説明してもらおうか。」
菅波の目にいつもの穏やかさはない。沙穂子が絡むと怖いとは聞いていたが…。
「はい…」
「いいよ、希良。
こんな陰険眼鏡に説明したところで何もならないって。」
「う、うぅ…でも…」
「ちゃんと説明するよな?宮路。」
菅波が笑顔で迫る。
「いーや、何も言わずにあたしについてくるよね、希良。」
沙穂子も満面の笑みで迫ってきた。
「宮路!!」
「希良!!」
その時、希良の中で何かがフっ切れた。
「うるさーーーいッッッ!!!」
希良は思いっきり叫んだ。
菅波も沙穂子も唖然としている。
「確かにあたしは吹奏楽が好きっ
合唱は嫌いっ
でも美音は助けるっ
だから合唱部に出るっ
以上!!!」
そのまま希良はヘタレ込むように机に伏せた。
教室内にシンとした空気が流れている。数人はひそひそ何かを話している。
菅波は気まずそうな顔をして言った。
「なんかわかんないけど…
俺たちを…吹奏楽部を裏切ってる訳じゃないんだな?」
希良は伏せたままでアクションがない。
困り果てて美音に目線をやると困ったような顔で笑いながらゆっくりと頷いた。