音楽バカ

―「それでは、音出しを開始してください。」

女子高生と思われる大会の係は、腕時計を見ながら言った。
チューニング室での音出しの時間は決まっており、それが本番前最後の音出しになる。舞台袖等での音出しは一切禁止だ。

念入りに息を入れ
管を暖め
心と楽器のモチベーションを上げる。


「真ん中を合わせましょうか。」

あぁ、そこは自分が好きな部分だ。

希良はどきどきしながら楽器に息を入れ直した。

1、2、3、

遙が指揮棒をあげるのに合わせて息を吸った。
みんなの呼吸が重なり合う。
これが最後の音出し。

最後…。

このメンバーで過疎化が進んでいたこの潰れそうな部活を2年と少し、死ぬ気で支えてきた。
楽器の扱い方も吹き方も最初は今一つわからなかったが、数少ない先輩たちは部活を潰すまいと必死に教えてくれた。

今は安定した人数だが、ここまで至るに一言では言い表せない苦労がある。

イベントも学校行事も楽しかった。
このメンバーでする本番はあと2回。

9月の学校行事での発表と

このコンクール。
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