。☆゜星空゜☆。
.:*ごめんね*:.
あたしは電源の入ってないピッチをただ見つめていた。
翼がいま頃、あたしを捜しているのかと思うと心が痛んだ。
そのとき、部屋のノックとともにお母さんが入ってきた。
「流奈、寝てる?」
「なに?」
「理恵ちゃんから電話だけど……」
「寝てるって言って」
「わかったよ」
「ごめんね~、理恵ちゃん。流奈、寝ちゃってるみたいなのよ」
お母さんは保留ボタンを押した。
「流奈?理恵ちゃん『起こしてくれ!』って。急用みたいよ」
「ったく、うるせ~な!」
お母さんから電話を奪い取った。
「もしもし?」
「流奈!?なんで家にいんの?」
「なんで……って、帰ってきたかったから」
「翼くんに、なにも言わず出てきたでしょ?」
「ぁあ……、忘れてた」
「なにそれ?あたしのところに何回も電話来て、捜し回ってるよ」
「そう……。じゃあね!」
「はぁ?なんなの、その態度!なにがあったの?」
「うるさいな!ほっといてくんない?なんなの?」
「あんたって本当、サイテーな女!」
電話が切れた。
あたしは部屋のドアに電話を投げつけた。
なにも知らないくせに……。
また涙がこぼれた。
わかってる、わかってるんだ。
心配してくれてること。
でも、どうしたらいいのかわからなくて。
「大丈夫?」なんて言って欲しくない。
なぐさめてももらいたくない。
同情なんていらないんだ。
もう消えることなんてない。
もう過去に戻ることもできない。
涙が止まらなかった。
戻りたい、昨日に。
翼と幸せなデートをした昨日に戻りたい。
でも、もう、戻れないんだ……。
あたしはピッチをしばらく見つめたあと、電源を入れた。
翼に逢いたい……。
画面に翼のメモリーを出したまま通話ボタンを押せないでいるあたしがいた。