。☆゜星空゜☆。


どのくらい車に乗っていたんだろう。


お兄ちゃんが車を停めてエンジンを切った場所は病院だった。


「流奈ちゃん……、行こう」


あたしの腕を掴み、お兄ちゃんは早歩きで病院に入っていった。


お兄ちゃんの手にはすごく力が入っていて痛かった。


それから、お兄ちゃんが足を止めた場所は、病室ではないドアの前だった。


躊躇していたお兄ちゃんが、あたしのほうを振りかえり、笑顔を見せてドアを開けた。


そこには、男性の医師と女性の看護師がふたりベッドの前に立っていて、あたしたちに頭を下げた。


「お兄ちゃん……?」


ベッドに近づき狂ったように泣き崩れたお兄ちゃんの姿を見ても、あたしは目の前の光景の意味がわからなかった。


ただ呆然をその光景を見ていた。


お兄ちゃんはあたしに近づいてきて、肩を抱きかかえてベッドのほうへ連れていってくれた。


「翼、流奈ちゃんだよ。翼……、早く起きろよ」


あたしはお兄ちゃんの顔を見上げた。


お兄ちゃんはあたしの背中をポンと叩いた。


あたしはベッドの上に横になってる人を、ただぼんやりと見ていた。


「流奈ちゃん……、翼だよ。翼なんだよ……」


お兄ちゃんの喚き声だけが響きわたり、あたしは部屋を飛び出した。


“つばさだよ。つばさなんだよ……”


翼は帰ってくるんだから。


お兄ちゃんの声を打ち消すように、そう自分に言い聞かせ、あたしは病院の外に出た。


お兄ちゃんが走ってきて、あたしに言った。


「流奈ちゃん、翼なんだよ。わかるよね?」


翼……。


顔は腫れ上がっていて、見られる状況じゃなかった。


「なに言ってるの?翼じゃない!!翼は帰ってくるって、あたしに電話してくれたんだよ!ここにいるわけがないじゃん!!」

「流奈ちゃん……」

「お兄ちゃん帰ろう?翼が帰ってくるから、早く帰ろうよ!」

「俺は帰れない。翼がここにいるから……」

「じゃあ、あたしだけ帰るからいい!!」


あたしが歩きだすと、お兄ちゃんはあたしの肩を掴んで怖い顔をしていた。




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