。☆゜星空゜☆。
このドアの向こうに翼がいる。
息をしていない翼が。
起きない翼が。
笑っていない翼が。
まだ信じられない気持ちでいっぱいのあたしは、立ち上がりお兄ちゃんと先生に近づいた。
「もう一度、翼に逢ってきていいですか?」
お兄ちゃんも先生も、深くうなずいた。
あたしはドアの前に立ち、深呼吸して部屋に入り、そこで立ち止まって、何度も何度も、心の中で「夢でありますように……」と願った。
それからベッドに近づいたけど、やっぱりどんなに願っても、ベッドの上で寝ていたのは翼だった。
あたしは顔にかかっている白い布を取り、翼の顔に手をあてた。
「痛かったね、翼」
涙が止まらなかった。
「どうして……、なんで翼なんだろうね……」
あたしは翼に話しかけつづけた。
翼が聞いているような気がして。
翼と出逢ったときのことから順番に、ふたりの思い出を話し始めた。
翼の笑った顔が好きだった。
少しひねくれた顔も、悲しそうな顔も、不安そうな顔も、真剣な顔も。
そして、いつも幸せそうな顔をしていた翼が、本当に本当に好きだった……。
大好きだった。
心から愛していた。
あたしは翼に抱きつき、声をあげて泣いた。
「翼……、流奈、悲しいの、苦しいの、つらいんだよ……。なのにどうして?どうして抱きしめてくれないの?頭なでてくれないんだよ!!」
翼が答えるはずないのに、それでもあたしは、必死に翼に話しかけた。
もう冷たくなった翼に。