。☆゜星空゜☆。
「翼はそんなこと望んでなんかねぇよ!!」
あたしは唇を噛み、お兄ちゃんを睨んだ。
「翼の告別式、5日に決まったから」
告別式、……。本当に翼がいなくなっちゃう。
本当に二度と逢えない……。
あたしは黙っていた。
「あと、翼の骨は、海にまいてくれるかな」
「えっ!?」
「流奈ちゃんと翼が行ってた海に」
お兄ちゃんはなにかを決意したように、あたしに言った。
「翼の幸せな場所に……」
海。翼の幸せな場所?
翼との未来を誓った場所。
叶うことのなかった。
あたしと翼の誓いの場所ーーーー。
お兄ちゃんは、あたしに微笑みかけた。
「それがアイツの望んでいることだよ」
あたしは呆然とお兄ちゃんを見ていた。
翼の人生を変えたあたしが憎くないのかな。
あたしがいなきゃ、翼は死ぬこともなかったのに。
あたしさえいなければ……。
「お兄ちゃん……、流奈、帰るよ」
「えっ?家に?」
「うん……、この部屋はやっぱりつらくて……」
「……、そう」
あたしには無理だった。
翼が戻ってこない部屋にいることは。
たくさんの翼との思い出が詰まった、この部屋にいることは。
「せめて……、せめて翼の葬儀が終わるまでは……」
あたしはお兄ちゃんの顔を見ないで首を振った。
「翼の葬儀にはかならず顔を出します」
「流奈ちゃん……」
「ごめんね、お兄ちゃん。あたしのせいで翼が……」
「流奈ちゃん!それ以上言ったら怒るから!!]
お兄ちゃんは目に涙をためて、声も震えていた。
あたしだけじゃない。
お兄ちゃんは、あたしよりもっと長く翼と一緒にいて、翼との思い出なんてもっとたくさん、たくさんあって。
なのに、あたしと出逢ったばかりに……。
翼のお父さんは?お母さんは?
翼のこと、もう聞いているんだよね……。
すごく心が痛かった。
お兄ちゃんは寂しそうな顔をして、部屋を出ていった。