。☆゜星空゜☆。


「翼はそんなこと望んでなんかねぇよ!!」


あたしは唇を噛み、お兄ちゃんを睨んだ。


「翼の告別式、5日に決まったから」


告別式、……。本当に翼がいなくなっちゃう。


本当に二度と逢えない……。


あたしは黙っていた。


「あと、翼の骨は、海にまいてくれるかな」

「えっ!?」

「流奈ちゃんと翼が行ってた海に」


お兄ちゃんはなにかを決意したように、あたしに言った。


「翼の幸せな場所に……」


海。翼の幸せな場所?


翼との未来を誓った場所。


叶うことのなかった。




あたしと翼の誓いの場所ーーーー。




お兄ちゃんは、あたしに微笑みかけた。


「それがアイツの望んでいることだよ」


あたしは呆然とお兄ちゃんを見ていた。


翼の人生を変えたあたしが憎くないのかな。


あたしがいなきゃ、翼は死ぬこともなかったのに。


あたしさえいなければ……。


「お兄ちゃん……、流奈、帰るよ」

「えっ?家に?」

「うん……、この部屋はやっぱりつらくて……」

「……、そう」


あたしには無理だった。


翼が戻ってこない部屋にいることは。


たくさんの翼との思い出が詰まった、この部屋にいることは。


「せめて……、せめて翼の葬儀が終わるまでは……」


あたしはお兄ちゃんの顔を見ないで首を振った。


「翼の葬儀にはかならず顔を出します」

「流奈ちゃん……」

「ごめんね、お兄ちゃん。あたしのせいで翼が……」

「流奈ちゃん!それ以上言ったら怒るから!!]


お兄ちゃんは目に涙をためて、声も震えていた。


あたしだけじゃない。


お兄ちゃんは、あたしよりもっと長く翼と一緒にいて、翼との思い出なんてもっとたくさん、たくさんあって。


なのに、あたしと出逢ったばかりに……。


翼のお父さんは?お母さんは?


翼のこと、もう聞いているんだよね……。


すごく心が痛かった。


お兄ちゃんは寂しそうな顔をして、部屋を出ていった。







< 145 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop