。☆゜星空゜☆。

.:*痛み*:.


どれだけ泣いたんだろう。


どれだけ泣けば涙はなくなるの?


まわりはもう真っ暗になっていた。


今日って、今年最後の日だよね。


そう思いながら、ポケットに入っていたピッチを出した。


よく無事だったな……。


理恵のメモリーを出して、かけようか迷った。


でも、体を動かすだけで全身に痛みが走り、とてもひとりで歩けそうになかったので、発信ボタンを押した。


電話のコール音が、あのときを蘇らせた。


翼にかけたときのことを……。


あたしがこのピッチで最後にかけたのは翼だった。


あたしが何度も何度もコールを鳴らしていたときには、もう翼は……。


そんなことを考えていたら、理恵にかけている電話さえすごく不安に感じて、コール音を聞いているのが怖くて電話を切った。


着信履歴や発信履歴を見ると、「☆☆だぁ~りん☆☆」という文字が目に飛びこんできた。


もう二度と「☆☆だぁ~りん☆☆」からの着信であたしのピッチが鳴ることも、


「☆☆だぁ~りん☆☆」へ電話をかけることもないんだ……。


そう思った瞬間、やりきれなくなった。


そのとき、ピッチが鳴ってあたしはびっくりした。


「非通知」という文字を見つめ、胸がキュンと痛くなった。


もしかしたら……、なんて本気で思って通話ボタンを押した。


「はい」

「流奈?どうした?」

「理恵……?」

「そうだよ。ごめんね、いま知り合いの家からなんだ」


わかっていた。


翼からかかってくることなんて、二度とないことは。それでも「非通知」の文字に少しだけ、期待を持ったりした自分がおかしくなった。


そして理恵があたしに気を遣って、「知り合いの家から」って嘘ついてくれたことも温かかった。





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