。☆゜星空゜☆。
3日の夜。静かなあたしの部屋にピッチの音が鳴り響いた。
着信――お兄ちゃん
あたしは急いで通話ボタンを押して電話に出た。
「はい」
「……な……ん?」
ピッチを左耳にあてたけど、なにを言っているのか聞きとれなかった。
「はい?お兄ちゃん?」
「……る……チャ……?」
あたしはピッチを右手に持ちかえて、もう1回聞き直した。
「流奈ちゃん?大丈夫?」
今度はハッキリと声が聞こえた。
「あ……、うん!」
あたしの耳……、もしかしておかしい?
大晦日に殴られてから、はじめて自分の耳の異変に気づいた。
「流奈ちゃん、明日のお通夜来てくれるよね?」
お通夜。その言葉を聞いただけで、胸が苦しくなり、一瞬黙りこんだ。
「流奈ちゃん?」
「行きます」
気がついたら、そう答えていた。
「よかった……。翼、きっと喜ぶよ。待ってるだろうから」
お兄ちゃんは時間と場所を告げた。
「明日ね!流奈ちゃん」
「はい……、明日……」
プープーと電話の音が鳴ったので、ピッチを左耳にあてた。
音は聞こえず、強く耳に押し当てた。
やっぱり……。
女たちに殴られて、左耳はほとんど聞こえなくなっていた。
けれど、そんなことよりも明日のお通夜のことに心は揺れた。
また現実を目の前にしなくちゃいけないようで、怖かった。
翼のお通夜?なんで翼なの?
考えるだけで震えが止まらなかった。