。☆゜星空゜☆。
第5章~天空に捧げる祈り~

.:*逢いたい*:.



1996年1月4日。


翼のお通夜が行われた。


本当にたくさんの人たちが来ていた。


翼の昔の友達だろうか、涙している人たちばかりだった。


あたしは黄色く変色した顔をファンデで隠し、肋骨の痛さに堪えながら、ボーッと突っ立っていた。


そのとき、あたしの目の前に怒りで満ちあふれている表情を浮かべた中年女性が現れた。


「あなた……、流奈さん?」


険しい顔つきと、どことなく翼に似た顔立ちを見て、翼の母親だと直感した。


「はい……、そうです」

「翼の母親だけど」


強い口調と鋭い視線が痛かった。


あたしは黙って頭を下げた。


「帰りなさいよ!」


怒鳴り声に顔を上げた瞬間、頬に痛みが走った。


「あんたが翼を殺したのよ!!あんたと付き合ってなければ、翼はこんなことに……。なんで翼なのよ……」


お母さんは泣き崩れた。


あたしは彼女をただ見下ろすことしかできなかった。


「よくも、のこのこ顔出したわね!帰ってよ!」


泣き崩れたまんま、あたしの足を押した。


まわりの人たちが、いっせいにあたしを見た。


あたしは、しばらくのあいだ深く頭を下げて、その場から離れた。


涙すら出てこなかった。


そうだよね。


あたしが翼を殺したんだよね……。


あたしと出逢ったばっかりに翼は、死んじゃったんだ。


あたしならよかったのに。


あたしが死ねばよかったのに。


もういらないのに。


こんな汚れたあたしなんて。


こんな体なくなっちゃえばいい、あたしの体なんて。


そう思いながら暗い道をただひとり、ゆっくり、ゆっくり歩いた。






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