。☆゜星空゜☆。

翼のいない現実が、あたしにはとてもつらすぎて、残酷で、それでも、翼のいない現実とどうしても向き合わなきゃいけない自分もいる。
 

なんでだろう……、なんでかな……。


どうして神様は急にあたしと翼を引き離したのかな。
 

お兄ちゃんの後ろ姿は、なんだかとても切なかった。寂しそうだった。


でも、あたしはなにも言葉にすることができないで、ただ、お兄ちゃんが見えなくなるまでずっと、その悲しそうな後ろ姿を見ていた。
 

あたしは重い腰を上げて、もう一度、玄関のノブに手をかけた。


あれ……?チェーンははずされていた。


気づいて開けてくれたんだ……。


家の中に入り、自分の部屋に戻った。


そして眠りについた。


朝方、耳元で鳴るピッチ。画面を見ると理恵からだった。


しばらく見つめたあと、通話ボタンを押した。


「もしもし?」

「大丈夫……?」


弱々しく話す言葉に涙が溢れそうになった。


「大丈夫だよ!ぜんぜん……」


理恵は気づいていた。あたしが翼のお母さんから罵られたことを。
 

理恵は黙っていた。


「大丈夫!理恵?でもね、これが現実なんだよ。だから、あたしが行くべきじゃなかったんだ」

「じゃ、告別式も来ないの?」

「行かないよ」

「翼くん、待ってるよ」

「行けない……、行けないよ」

「そう……、流奈がそう言うなら、もうなにも言わないよ」

「……ごめん」

「一応、時間だけ。朝の10時からみたいだから」
 

あたしは黙っていた。


「じゃあね」
 

無理……、無理だよ。本当に、本当にさよならになっちゃう。そんなの嫌だよ……。
 

あたしはそのまま眠れず、ベッドの中で翼とのことを思い出していた。




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