。☆゜星空゜☆。
.:*月夜の奇跡*:.
なに、アイツ。
イライラしながら、あたしはもう一度、公園のベンチに腰を下ろした。
そしてポケットからピッチを取り出そうとした。
「あれっ?ないっ!」
だよね……。
あれだけ雄也と乱闘して宙吊りにされりゃ、ピッチも落ちるはずだわ。
そう思って笑えた。
悲しいはずなのに、孤独を感じていたのに……、笑いが止まらなかった。
“……ん?あれ?”
さっきのムカつく男があたしのほうに近づいてくる。
「笑ったり泣いたり、忙しい女の子だなぁ」
「はっ?見てたの?」
「『見てたの?』もなんも、俺の家、この裏だからさぁ〜」
「そう……」
男はなにも言わず突然、ベンチに腰かけた。
「なにっ!?」
「こんな遅くにひとりじゃ危ねぇーよ」
「うるさいよ!関係ないじゃん!ってか、大丈夫だし」
「まぁ……、その顔じゃ男も声かけねぇけどな……」
「マジなんなの?ムカつくんだけど!」
「そんな怖い顔すんなよぉ〜、ほれ!」
男が袋を差し出した。
「なに?これ……」
「応急処置!」
中を覗くと絆創膏とマキロンが入っていた。
「えっ……?」
あたしが不思議そうにしていると、
「貸せよ!」
と言って、あたしから袋を取り上げた。
「えっ……」
「ほら、顔!こっち向いて」
あたしは言われるがままに男の方を向いた。
顔が近すぎて、とっさに目を反らした……。
「ププッ。いま緊張した?大丈夫だよ、なんもしねぇから」
コイツ、本当にムカつく!からかわれている気がして、あたしはふてくされた。