。☆゜星空゜☆。
.:*約束の海*:.
理恵に言われたとおり、10時に間に合うように家を出た。
少しでもいいから近くで……。
それがあたしの最後の願い。
重い足取りながらも、式に向かった。
怖かった。
その場所に行ったら、嫌でも現実にさらされる。
嫌でもすべてを受け止めなきゃならない。
考えると、すごく胸が痛くて苦しかった。
なのに、こういうときにかぎって、ゆっくり歩いたはずなのに早く着いてしまう。
現実からは逃げられない――。
あたしは少し離れて見守った。
翼を送りに来てる人は、びっくりするほどたくさんいた。
あたしはその中に入らず、隠れるように立っていた。
「翼、ごめんね……、近くに行けなくて。流奈はここにいるからね」
決めていたんだ。今日は絶対に泣かないって。
今日だけは。翼の大好きな、あたしの笑顔で送ろうって。
だから一生懸命、涙を堪えていた。
しばらくすると、まわりがざわめきはじめて、お兄ちゃんが話をしはじめた。
遠くにいるあたしは、お兄ちゃんがなにを話してるか全然聞きとれなかった。
ただ、みんなが涙を流している姿だけが見えた。
「翼、みんな来てくれてるよ。ちゃんと見てる?翼がいなくなったことを悲しんでるんだよ。こんなにもたくさんの人が悲しんでる……」
あたしもみんなの涙につられそうになった。
絶対、泣かない!
あたしは深呼吸をした。
あたしと翼が出逢わなければ、あたしがあの日、コンビニに行かなければ、あたしが翼に真実を告げなければ。
こんなにたくさんの人たちを悲しませることもなかったんだ。
そう思うと、ここで隠れて見てることさえ、いけないことのように感じた。