。☆゜星空゜☆。
しばらく歩き大通りに出て、手を挙げタクシーを止めようとした。
でも、ずぶ濡れのあたしを乗せてくれるタクシーはなかなかなくて、空車でも平気で前を通り過ぎていった。
それでもあたしは諦めず、手を挙げつづけた。
すると1台のタクシーがあたしの前で止まり、ドアが開いた。
「あの、服がびっちょりなんですけど……」
そう言うと、タクシーの運転手さんはトランクを開け、毛布を渡してくれた。
「寒いでしょ。かけな」
その人の笑顔が、すごく優しくて、涙が出そうだった。
「早く乗りな」
あたしはシートに毛布を敷き、車に乗った。
「どこまで行くの?」
あたしは行き先を告げた。運転手さんはミラー越しにあたしを見ると、なにも言わず走りだした。
「お嬢ちゃん、まだ若いよね?」
「……はい」
沈黙が走った。
「人生、いろんなことがあるんだよな……。でも頑張れば、かならず誰かが見てくれてるから」
「……」
あたしは黙って外を見ていた。
「お嬢ちゃんはひとりじゃないよ。かならず見ていてくれるから」
あたしはドキッとして、ルームミラーを見た。
運転手さんは優しい笑顔をしていた。
まるで、なにかを悟ったかのように。
まるで、翼があたしに話しかけたかのように。
とても優しい口調で、とても優しい笑顔をしていた。
「はい……」
しばらくして、そう答えた。
幸せ掴むんだよ……」
あとはもうなにも話しかけてはこなかった。
あたしは運転手さんを見ていた。
なんだか翼に言われているような気がして。
翼があたしにメッセージを届けてくれた気がした。