。☆゜星空゜☆。

「流奈ちゃん」


お兄ちゃんがしゃがみこんで、あたしの手を握った。


翼が入っているあたしの手を。


「来てくれてありがとう」


そう言うと、涙を流した。


「お兄ちゃん……」


それ以上、なにも言えなかった。


「翼な……、翼さ、骨が溶けて、ぜんぜんなかったんだよ……」

「えっ?」

「あいつ、クスリやってたから。骨がぜんぜん……」


そう言うと震えが止まらなくなって、なにを言ってるのか聞きとれなくなった。


「寂しかったんだろうな。あいつ、いい環境じゃなかったから。寂しかったんだろうな」


肩を震わせ泣いていた。


「でもな、そんな翼が流奈ちゃんと出逢って変わっていったんだ」


あたしは手の中の小ビンを見つめながら、お兄ちゃんの話を聞いていた。


「あいつ、笑わなかったんだ、ずっと。いつからか笑わない奴になってた」


信じられなかった。


あんなに幸せそうに笑う翼が、あの素敵な笑顔を見せなかったなんて。


「流奈ちゃんに出逢って、翼は笑うようになったんだよ」


あたしは、もう涙が止まらなかった。


それでも、もうわかっていた。


幸せな日々が戻ってこないということを。


「もう少し……、もう少しだけでもいいから、あいつに幸せそうに笑っててほしかったな……」


お兄ちゃんは海を見つめたまま話していた。


あたしは人の死を手のひらの中で実感した。


「翼、怖かったよね……。ひとりで、つらかったよね」


あたしは小さな小ビンにKISSをした。




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