。☆゜星空゜☆。
笑うことを失っていた翼が、あんなにも素敵な笑顔で、いつもあたしを迎えてくれた。
笑うことを忘れていた翼が、あたしに笑顔を求めていた。
“もう少しあいつに幸せそうに笑っていてほしかった”
お兄ちゃんの言葉が胸に突き刺さった。
「翼……、ごめんね……」
あたしも海を見つめた。
翼と付き合い始めた海で。
翼と一緒に来た海で。
翼と叶うことのない願いを誓った海で。
あたしはいま、翼とさよならしようとしている。
あたしの手のひらにいる翼と、こんなに小さくなった翼と最後のさよならをしようと。
翼とあたしの幸せの場所でーーーー。
「流奈ちゃん、行こうか」
そう言うと、お兄ちゃんは静かに歩き始めた。
あたしもあとを追った。
翼をしっかりあたしの手の中に包んで。
お兄ちゃんが小さな手漕ぎの船に乗ったので、あたしも一緒に乗った。
夜の海。
静かな海。
あたしはずっと翼に話しかけていた。
「流奈ちゃん……」
お兄ちゃんはあたしの頭をなでてくれた。
「えっ?」
小さくうなずき、あたしの手を見つめながら、
「これが翼の願いだから」
なにかを予期したように、力強く言った。
でも、あたしは首を横に振った。
小さくなったあたしの手の中にいる翼をギュッと握りしめて。
あたしは泣きながら、なにも言わず、お兄ちゃんに向かって首を振りつづけた。