。☆゜星空゜☆。


「翼、寂しいよね。少しここに残るね」


あたしは砂浜に腰を下ろした。


翼からはたくさんいろんなものをもらったのに、あたしはなにひとつ返すことができなかったね。


ごめんね……。


翼と出逢った公園。


一緒に行ったプールやゲームセンター。


手をつなぎながらドライブした景色。


クリスマスに歩いた、きれいなイルミネーション。


名前を彫った夜景のきれいな公園。


翼を過ごした部屋。


そして、たくさんの幸せをくれた、この海……。


翼との日々が、いっきに蘇ってきて、あたしはただ、海を見つめていた。


翼が消えていった海を。


「翼、静かだよ。波の音しか聞こえないよ……」


あたしはつぶやきながら、ネックレスに通した翼の指輪を握りしめた。


「泣かないよ、翼?あたし笑ってるからね。どんなにつらくても、笑ってるよ」


星空を見上げて、ささやいた。


翼が海の中に静かに消えた日は、本当にたくさんの星がきれいに輝いていて、翼と初めて来た夏の夜の海を思い出させた。


あの日、翼は星空に笑いかけていたよね……。





「きれいだねっ、翼!」


「きれいだろ?俺さぁ、星好きなんだよな」


「なんで?」


「なんかすげー安心するんだ。星見てると」


「ふ~ん」





そう。あたしたちは、いつもこんなにきれいな星空の下にいた。


つらいときも、悲しいときも、うれしいときも、幸せだったあのときも……。


そして、これからもずっと、こんなにもきれいで、翼が大好きな星空の下にいられる。



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